SPECIAL

ILLUST STORY

#11
復讐の果て

復讐が何かを生み出すか、本当に必要なことか。
答えはトワの中にもない。

最後の瞬間は、仇敵を倒せたことよりも、友達を守れたという感情のほうがずっと大きかった。

夜海トワが復讐を誓ったのは、篠宮マナ個人にではなかった。
魔人化薬という存在、魔人の力を求める人間。そして大切な人を守れなかった自分自身。
篠宮マナは、その流れの中心にいる人物というだけ。

トワはそんな相手に無謀に挑んで、そして敗北した。
命を捨てても、全てを賭けても、それでも破れた。

そのことに、苦悩はあっても後悔はない。
だって、そうとしか生きられなかった。

守るべきものを思い出して、最後の戦いをできたとして、結果がどうなっていたかはわからない。
ただ、篠宮は殺す。仲間は助ける。本当の意味で命のすべてを燃やし尽くしてでも、それだけは必ず叶えるつもりでいた。

そうならなかったのは、シイナが――友達が、いままで変わらない声で、変わらない調子で来てくれたから。
行き違いがあったことも、一瞬とはいえ能力を奪いかけたことも、一方的な別れを告げたことも。
シイナはそんなすれ違いなどなにもなかったかのように、いつもの調子で来てくれたから。

トワが篠宮との戦いを引き受けてくれたシイナに追いつけたのは、仲間達をEXCEEDSの救護班に引き渡し、自分は治療を受けることなく、すぐに追いかけたからだった。
「久瀬シイナは、篠宮マナを倒せる。」
わずかとはいえその能力――紅蓮の一端に触れ、実際にシイナの炎を見たトワには、それが理解できた。

それでも追いかけたのは、シイナが紅蓮のすべての力を使いこなせるかどうかがわからなかったから。
そして「もしも」があった時に、自分がいなくてはいけないという思いがあったから。
シイナの「危なくなったら助けてね」という言葉に、答えることができるのは自分だけだという気持ちがあったから。

決着の瞬間をトワは目撃した。
半身を消し飛ばされた篠宮が、意識を喪失したシイナを襲おうとした時。
トワは自らの手で友人を守り、復讐を果たした。

篠宮を殺せたことに、トワは何も感じなかった。
何かを成し遂げた達成感も、悲しみや喪失感が癒えることも、何もなかった。
あったのはただ「間に合ってよかった」「シイナが無事でよかった」という安心。それだけだった。

復讐が何かを生み出すか、本当に必要なことか。
答えはトワの中にもない。

最後の瞬間は、仇敵を倒せたことよりも、友達を守れたという感情のほうがずっと大きかった。

ただ、自分の歩んできた道に後悔は無く、望んで手にした力があって、望んだ道を進んだから、大切な仲間と出会えた。
友達と出会えた。友達を助けることができた。
沢山間違えたけど、生きて、何かを成すことが出来た。
それでいい、とトワは思った。

成すべきことはまだ残っていて、守るべきものがあるのだから。