SPECIAL

SHORT STORY

#1-2
久瀬シイナ Afterwards

死にたくなるほど悲しくなっても、それだけでは人は死なない。
行動を選ぶのは常に自分で、未来は自分で選んだ方向に進んでいく。
それならば、妹が望んでくれた未来に進もう。

「自分らしくて幸せな生き方を、ちゃんとやる。そのために全力で生きる!」

それがシイナの新しい目標だった。
妹は、セツナは、「紅蓮」の能力として、自分の中で生きているのだから。

瑞穂・観東地区北東部、廃墟区画。
人が住むこともなくなり、自然に侵食された都市は、廃墟として奇妙な美しさを見せていた。
そんな観東水没廃墟の一角、水没を免れた陸地の区画、久瀬シイナは一人でキャンプを張って生活していた。

炎を操り、対象から生命力を奪い取って自分の力に変換する能力「紅蓮」。
妹からその能力を継承したシイナは「魔人」となった。
炎を生み出し、その炎を銃弾として打ち出す能力。超人的な身体能力、四肢の欠損すら瞬時に治癒する再生回復能力。
そういった特殊な能力と、わずかな外観の変化――髪色の末端が明るい色彩に変化するようになった――を、シイナは違和感なく受け入れた。

妹セツナの死は、当然悲しい。
幾度も泣いたし、後悔もしたし、落ち込みもした。
それでも、絶望に沈んだり、セツナを殺し、シイナの人生を歪めた魔人や侵略種に対する怒りや憎しみに身を浸すような事にはならなかった。

最後に自分に贈り物をしたセツナの願いが「自分らしく、幸せに生きてほしい」というもので、その言葉が、優しい笑顔で伝えられたものだったから。
死にたくなるほど悲しくなっても、それだけでは人は死なない。
行動を選ぶのは常に自分で、未来は自分で選んだ方向に進んでいく。
それならば、妹が望んでくれた未来に進もう。シイナはそう考えていた。

「自分らしくて幸せな生き方を、ちゃんとやる。そのために全力で生きる!」

妹は、セツナは、「紅蓮」の能力として、自分の中で生きているのだから。

何か趣味を探すのもいい。
友達は、現在の生活環境だと作るのはなかなか難しいかもしれないが、別に焦ることでもない。
自分らしく生きていくための仕事として、自分自身が学び鍛えてきた「害獣駆除」を続け、その仕事に、セツナがくれた能力が力を貸してくれる。

「駆除報酬が入ったら、まずは食べ歩きに行って、ちゃんとした宿に泊まって、お風呂に浸かって……」

駆除ハンター・久瀬シイナの日々は、忙しくも充実していた。

*    *    *

国連危険生物調査機関『EXCEEDS』。
世界各地に支局を置いて稼働するこの調査機関は、侵略種の駆除と侵略種災害の防止、そのための調査研究を目的とした機関である。
各支局には、自局の担当地域に生息する危険な侵略種や、侵略種災害の情報が絶えず集まってくる。
ここ極東支局でも、担当地域の一つである「瑞穂」内での情報が詳細なデータとして共有されている。

調査員の一人・高町なのはは、とある離島で発生した事件に注目し、その件の調査を上司に進言し、許諾されていた。

事件の被害者は死者一名。小学五年生の女の子が亡くなっており、その姉である高校二年生の少女は無傷で保護されている。
そして高校二年生の少女・久瀬シイナは島を離れて、現在は観東廃墟で害獣駆除の仕事をしている。

調査の結果、その少女は、事件を通じて「特異体質」を獲得していることが明らかになっている。
(組織の長・八神はやてからは「よく見つけたな?」と驚かれたものだった)

侵略種因子適合人類『魔人』。
そんなシイナに会いに行って、話を聞いてくる許可はすでに降りている。
事件の被害者であり、家族を亡くしたばかりの未成年ということで、慎重な対応を行うことが改めて共有されている。

なのはは若いが、現場を多く踏んできている。
話を聞くこと、話をすることについては、自信はともかく経験と熱意は持っている自覚があり、難しい対話を成功させてきた実績もある。

携帯電話の圏外でキャンプ生活をしているシイナにアポイントメントを取る手段がないため、なのはが直接出向くことになっている。

現地の問題を現地の組織と人材によって解決する、そのための人材発掘とサポートを行うことを大切にしているEXCEEDSにとって、久瀬シイナという人物がどんな存在になるか、どんな関係を築けるか。

期待を胸に、高町なのはは久瀬シイナに会いにゆく。