「魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance」オフィシャルインタビュー
監督 浜名孝行
●まずは全12話の放送を終えて、現在の率直なお気持ちをお聞かせください。
「なのは」は高いハードルがたくさんある作品なので、そこから解き放たれたというか、重い荷物を下ろしたような感覚はありますね。それはお話をいただいたときから、覚悟のうえではあったんですけど……。自分の作りたいものを作るというよりは、求められているものを作らないといけないという気持ちのほうが強かったので、それがなくなると、ちょっとホッとするものがありました。
●なのはシリーズには劇場版の「Reflection」「Detonation」から関わられていますが、当時のシリーズに対して感じられた印象や、今回のTVシリーズで続投されることが決まったときのお気持ちをお聞かせください。
最初は僕のところに話が来るとは思っていなかったので、すごくびっくりしたというか、「僕でいいんですか?」みたいな感じもあったんですけど、逆に都築(真紀)さんのほうがウェルカムな感じではありましたね。今回のシリーズに入るにあたっては、前の作品で「もうちょっとできたんじゃないか」という気持ちが多少なりともあったので、その反省を生かしたいなというところで、やる気をもって参加させていただきました。もちろん「Reflection」も「Detonation」も気に入っている作品ではあるのですが、「もっとやれたのにな」という心残りはあったので。
●都築真紀先生と共に新しいシリーズの世界観を作り上げていくうえで、監督から出されたアイデアがありましたら具体的に教えていただけますか?
最初に話をもらった時点で大体の構想があったので、僕としては何か具体的なアイデアを出すというよりは「こんなイメージにしたい」という、肉付けするような作業が多かったです。「これを入れたい」とか「もっと何かを出したい」とか「これは見せ場にしたい」とか、そういう話を拾ってもらったような感じですね。あとは都築さんはアクションを多めに入れたい人だと思うのですが、それだとアクションばかりになってしまうので、逆にアクションの少ない回を入れてみたりして全体のバランスを取っていきました。
●キャラクターデザインや作画、音楽、美術など、各セクションのスタッフにはどんな要望を出されましたか?
キャラクターはまずキャラ原案の川上(修一)さんに都築さんのイメージを具体的に作ってもらって、それからアニメに起こすにあたってキャラクターデザインの新垣(一成)さんと4人で話し合いながら、1点1点詰めていきました。美術に関しても似たような作業ではあって、美術のキューン・プラントさんに出してもらったものを都築さんに見てもらって、チェックバックしてもらう形が多かったと思います。音楽はSeven Arcsの田中(辰弥)さんがとても精通している方なので、田中さんの協力のもと、曲のサンプルを作曲家の方に聴いてもらって、近い楽曲を上げてもらうということもしましたね。
キャラクターに関しては内容が変わるとデザインも変わり、たとえばシイナが着けているセツナのパーカーも最初は巻いていなかったんですけど、それを形見として腰に巻こうという話になって、あとからデザインを追加してもらったりしました。それを反映できるデザイナーさんがいるというのは、やっぱり心強かったですね。僕的にはダメ出しをすることは一切なかったので、デザインが上がってくるのを楽しみにしていた感じが強いです。
美術で言うと、1話は皆さんに初めて見てもらえるものなので、そこはきっちりしたものを作らないといけないと思って、近くの島へいくつか取材に行ったりしました。島のリアリティーみたいなものは、ちょっと出したいなと思っていましたね。逆に本土のほうの施設は基本的にキューン・プラントさんにお任せでたくさん作っていただきました。いい意味での庶民感というか、生活感が出ていてよかったなと思います。銭湯があったり、ラーメン屋があったりみたいなところと近未来的なところが自然に融合していましたね。
●シリーズを支えてきた歴戦のキャストと今回から登場する若手が共演するアフレコ現場の雰囲気はどのようにご覧になっていましたか?
若いキャストの方が多かったので、やる気がすごく満ちている現場だったかなと思います。オリジナルの作品なので先の展開をすべて役者さんに言っているわけではないので、「この話はどうなるんですか?」とか、わからないことがあると質問をされたりしました。音響監督のハマノ(カズゾウ)さんもすごく人柄がよくて、楽しくしていただいた現場だったので、そういう意味ではとても頼もしく。ハマノさんと僕と都築さんと、「これはどうだ?」と言い合いながら作り上げていったような感じもありますね。
●水樹奈々さんのOPテーマ「CRIMSON BULLET」、青木陽菜さんのEDテーマ「Ephemeral」の印象はいかがですか?
オープニングとエンディングに関しても、コンテ・演出はすごく腕のある方にやっていただいたので、僕からの直しはほとんどなかったです。曲に関しても都築さん主導なので僕からは何も言うことはなく、かっこいいなという印象でした。やっぱり水樹さんの歌には「なのは」が始まった感があるので、そこは「なのは」らしさがいちばん出ているところなのかなと思います。
●監督としていちばん力を入れたシーンや、お気に入りのシーンはありますか?
1話はこのシリーズの始まりなので、いちばん力を入れましたね。ここが崩れてしまうと、全部崩れてしまうと思うので。とは言っても、1話はトワも出てこないし、マナとか蔵木とかも出てこないので、本当の意味での1話というのは2話以降になってくるのかな……と思いつつ。あとは最後の11、12話のアクションは「なのは」らしくもあり、3Dも音楽も、作画も役者も一体となって頑張ってくれたような感じがするので、そこは気に入っていますね。
ドラマ的に気に入っているところで言うと、トワが一人でマナのところに乗り込んでいって、それを助けてくれるのは魔人狩りの子たちであり、EXCEEDSであり、ちょっと気持ちがすれ違っちゃったシイナという、そこは好きなところではあります。トワを助けたいという一心から来る意志の強さとか、そこをちゃんと受け止めてくれるEXCEEDSの面々だとか、後半に向けてつながっていくのかなと思っていました。
●制作でいちばん大変だった話数は何話になりますか?
作業的には中盤の話数がいちばん大変だったのかなと思います。コンテチェックもあるし、レイアウトチェックもあるし、最後のコンテもやらなきゃいけないとか、いろんな意味で作業が集中するのが中盤の話数なので。そこを乗り切ると僕の中ではちょっと楽になって、他の人に迷惑をかけることなく、スムーズに他の作業にも流れていけました。
●今後またシイナやトワたちの物語が作られるとしたら、彼女たちにどんなふうになっていてもらいたいと思いますか?
シイナとトワがこのシリーズを経て良好な関係になれたと思うので、その二人の絆がさらに大きくなって、この世界を変えるというと大袈裟かもしれないですけど、人間的にも大きくなってほしいなと思います。そのためにはもうちょっと大きな試練だとか、さらなる障害があるんだろうなとは思いますが、この二人のドラマをもっと見たいかなというのはありますね。それは魔人狩りの子たちも同じかもしれないなと思いつつ、敵が出てくるからやっつけるというよりは、社会が生み出した膿みたいなものがマナや侵略種だと思うので、そこに対してのエクスキューズのような形でトワやシイナたちが関わってくれるといいのかなと思いますけどね。
そうやって未来へ向かって進んでいくのが、マナとシイナたちとの違いなんだと思います。単に強くなりたいとか自分の欲望だけではなくて、土下座してでも助けたいという行動に出るのが、関係性がないと別にそんなことはしないと思うので。その行動のきっかけになったのは、トワと魔人狩りの子たちの関係があって、それはトワの彼女たちに対する優しさなんだと思うんですよね。表面的にはツンケンしていたりするのかもしれないんだけれども、根底に彼女たちを思う優しさの部分があるからこその行動で、それが決定的な違いなんだなと。なので、敵を倒せば終わりということではなくて、その先の未来をちゃんと見据えた形での行動を二人だったらしてくれるんじゃないかなと思っています。
●改めて、最後まで放送をご覧いただいたファンへのメッセージをお願いいたします。
「なのは」はスタッフがすごく愛をもって作っている作品で、細かい部分まで大切に作り上げているので、末永く楽しんで見ていただけるとうれしいなと思っています。
