「魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance」オフィシャルインタビュー
音響監督 ハマノカズゾウさん
●リリカルなのはシリーズには今回が初参加となられるかと思いますが、お仕事を引き受けられた経緯をお聞かせいただけますか。
実は監督の浜名(孝行)さんと、プライベートな知り合いなんです。僕は埼玉県に住んでいるんですけど、埼玉に住んでいるアニメ関係者が集まる埼京線会という飲み会 を主催していまして、その中に浜名さんもいらっしゃっていて。そこで「一緒にお仕事したいね」と話していて、実現したのが「リリカルなのは」でした。でも、タイトルを聞いた瞬間は正直すごく驚きましたね。お話をいただけたのはありがたいのですが、こんなビッグタイトルとは思わなかったので……。
●作品を引き受けられるとなって、これまでのなのはシリーズをご覧になられたりはしましたか?また、シリーズへの印象は何かありましたか?
僕は常に全部観ることにしています。「なのは」の場合はお話をいただいてから、オーディションまでそんなに時間がなかったので、一気に全部観ましたね。最初は「女の子がいっぱい出てくるバトルものの作品なんだろうなあ」くらいの認識で観ていたら、だんだんと「リリカルなのは」の“リリカル”はこういう意味なのかと気づいていって。全編を通して、ただ戦っているだけじゃなくて、そこには相手への想いや「友達になりたい」という気持ちが込められているんですよね。第1期のなのはとフェイトから始まって、すべてのシリーズが必ずそこを題材にしている。期間が短いなか、一気に全部観てしまいましたし、どのシリーズも観ながらワクワクできたので、深い作品だなというのが一番の印象です。
●音響演出やキャスティングに関して、浜名監督や原作の都築真紀先生と何か話し合われたことはありましたか?
キャスティングのバランスで言うと、このシリーズではベテラン組がいますから、新しいキャストはベテラン組の少し下くらいのキャリアの人たちでいくのか、それとも新人さんでいくのか、その辺りはちょっと聞きました。そうしたら、新人さんでいきたいという制作サイドの意見をうかがって、今回は新人さんたちが活躍する作品で、そこにベテランが融合する形にしていこうという、それは打ち合わせの時にお話ししましたね。
●歴代のなのはシリーズに出演してきたベテランのキャストと今回から初参加となる若手のキャストが共演する作品ですが、ディレクションや現場の雰囲気作りなどはどのように進められていきましたか?
今は昔ほど怖い音響監督もいないんですけど、それでもアフレコ現場はピリピリとした環境ではあるじゃないですか。それが強すぎると新人さんにとってはプレッシャーや恐怖になっていくので、僕は現場では「明るく、ノリよく」をモットーにしています。そもそも僕は声優さんたちをリスペクトしているので、皆さんのポテンシャルを100%出してほしいと考えていて。なので、やりやすい環境を作るというのがいちばん大事にしていることではあって、第1話から明るい現場でした(笑)。特に主人公の橘(杏咲)さんがとてもポジティブで明るい方なので、僕のテンションの高さに引かずに乗ってくれたのはよかったですね。
●田村ゆかりさん、水樹奈々さんらはすでにシリーズのこともキャラクターのことも熟知されているかと思いますが、お芝居や役作りに関して話し合われたことはありましたか?
田村さんや水樹さん、植田佳奈さんたちは皆さん「なのは」に関わっている時間がとんでもなく長いので、新参者の僕が音響監督だからといって口を出せることはないですね。なのはに関しては田村さんがいちばん理解している。フェイトやはやてに関してもそう。ただ、問題点は今回の作品の世界観。新しい作品の世界になのはたちが入ってくることになるので、世界観の背景や作品の雰囲気、においに関しては一緒に考えていただきました。
田村さんとは過去にも音響監督としてご一緒した作品があったんですけど、それも10年くらい前だったので、今回久しぶりにお仕事をご一緒して、声がまったく変わっていないことに驚きました。十何年前にご一緒したときと出している音が本当に変わらないんですよね。
●橘杏咲さんや結川あさきさんら若手のキャストに関して、全話のアフレコを通して成長を感じられたことはありましたか?
1話のラスト、シイナとなのはが対面する場面は、橘さんがめちゃくちゃ緊張したと思います。田村さんと一緒にアフレコするだけでも緊張するはずなのに、シイナは身長もなのはより大きいし、年齢も設定上なのはより上なので、完全にお姉さん。あの田村ゆかりさんよりお姉さんな立場でしゃべるというのは、橘さんは相当なプレッシャーだったと思いますよ。そこは温かい目で見守っておりました(笑)。
今の新人さんって、とても吸収が早いんですよね。1話で戸惑っていたことや、あまりうまくいかないなと思っていたことが、トントン拍子でよくなっていく。びっくりしたのが、1話のときに作った作品のにおいが、田村さん、水樹さん、植田さんらが合流するたびに、グッと「なのは」らしくなっていくんですよ。新人の方たちも田村さんたちのことをリスペクトしているので、そうやって融合していくのがとても面白かったです。
印象的なシーンは、お互いの正体を知ったシイナとトワにすれ違いが生じる8話のシーンで、シイナが「あたしのこの力は大切な子から贈ってもらったものだから(あげられない)」と言って、トワが「シイナは私より、その人たちのことを信じるの?」と言ったりする、あそこの会話がヒリヒリして、僕はたまらなく好きですね。
●第1話や第6話など挿入歌が印象的な回もありましたが、使い方で考えられたことや楽曲自体の印象などをお聞かせください。
それに関しては都築さんが作詞をして、作曲の方が作っている時点で「こういうシーンで流したい」という思いは絶対にあるので、どこのシーンで流したいかということは必ず聞きます。そのうえで「ここのシーンでかけるんだったら、これくらいから始めたい」とか「ここで終わりたい」とか、細かい位置に関しては浜名監督と僕とで話し合って決めました。
●劇伴音楽に関して、ハマノさんからはどのようなオーダーを出されましたか?また、本編での使い方で何か意識されたことはありましたか?
今回は塩野(海)さんが劇伴を作ってくれていますが、塩野さんは劇伴作家というよりはアーティストなので、音楽に対して自分の世界観を持たれている。なので、「こういう曲が欲しい」というオーダーはすべて伝えたんですけれども、どんな曲にするかは塩野さんの感覚を優先してほしいというのが、今回いちばん考えたところです。そうしたら、とてつもなく素晴らしい曲が上がってきて、僕はデモを聴いて絶賛しか塩野さんに返していません(笑)。「シイナが戦うシーンはこの曲だから盛り上がるな」とか「ここで絶対この曲かけたいよな」とか思わせてくれる曲たちだったので、とても選曲がしやすかったです。
今回の作品でいちばん意識したのは、塩野さんが音楽の構成とかをすごく深いところまで考えられる作曲家さんなんですね。なので、「この曲とこの曲はこのために作られていて、これはリンクしているから、こういう使い方をしたほうが曲は活きる んだろうな」みたいなことを考えたりしました。あと、僕は音響監督として、常々曲が主張したらダメだということを意識してはいるんですね。「なのは」だったらお互いの気持ちをぶつけ合ったり、気持ちを伝え合ったりしているところで曲が邪魔したくないという、音響監督としての方針があるんですけど、今回は塩野さんの曲がとてつもなく美しかったので、静かなシーンでもかけたいと思うことが多々ありました。いつもの僕よりはセリフ劇のところでも曲をつけてしまったというのが「リリカルなのは」シリーズのすごさかなと思います。
●SEなどのつけ方で工夫されたことはありましたか?
今回の効果は斎藤(みち代)さん、小山(恭正)さんのお二方にお願いしたんですけれども、都築さんがいちばん気にされていたのが従来の魔法の音と、今回は魔法じゃない戦いがあるので、そこの差別化はすごく意識しました。特に炎の魔人であるシイナの炎の音とか、トワが氷を使うときの音とか、魔人が戦うときの効果音に関しては現場で都築さんにイメージを伝えていただいて、小山さんがその場で「じゃあ、こっちの音はどうでしょう?」という感じで音をつけていきました。
面白かったのは、トワの武器が出るときにカシャンといって開くんですけど、その音が目立つとか目立たないとか、もっと立てようとか、もっと足そうよとか、もっとシャープにとか、いろいろ議論して、すごくこだわっていたのが印象に残っています。通常は戦っているときの音を意識するものなのに、納めている鞘のほうにこだわっているというのは面白かったですね(笑)。
シイナの炎の音も、小山さんがボンボンボンってつけてくれました。普通、爆発するような音だとバン!ってなるけど、それだと火薬っぽくなっちゃうじゃないですか。でも、魔人の能力としての炎なので、バンではなく、メラメラでもない。それを小山さんと斎藤さんがブォンという音で作ってくれて。特に3話でシイナが建物を飛びながら移動してくるところの、ボワン、ボワンという音とかも、「この炎の音がいちばんイメージ合うな」と思いながら。なので、シイナの炎の音は小山さんたちにすごく頑張ってもらったなと思います。
●この作品を手掛けられて、改めてハマノさんが感じられたことをお聞かせください。
いちばん思ったのは、やっぱり「リリカルなのは」はビッグタイトルなんだなということを実感しました。僕も音響監督としてお仕事させてもらっているなかで、これほどリアクションが来たものはないんですよね。アニメ関係者で年齢が30代~50代くらいの人に「なのは」好きな人が多くて、行く先々の現場で「なのは」の話題がやたら出るという。あとはスタッフさんたちの全員の熱量が高くて、プロデューサーの田中(辰弥)さんをはじめ、いろんなポジションの方が「もっとこうしてほしい」とか「このほうがいいんじゃないか」と、いっぱい言ってきてくれるんです。すべての方たちがこの作品を作ることに対しての熱量が異常に高くて、こちらも仕事に対してのそのカロリーの使い方が非常に高かったなというのは感じます。でもやっぱり、「なのは」に関わっていることがうらやましいといろんな現場の方たちから言われるので、やれてよかったという一言に尽きますね(笑)。
