第8話スチールa

気を失ったまま、アースラに収容されたフェイト。

なのはの時と同様にリンカーコアに酷いダメージを受けているものの肉体的負傷は浅く、魔力以外はすぐに回復するということだった。

整備を終えて試験航行中のアースラのミーティングルームでミーティングが行われる。

なのはが出撃してすぐ、駐屯所のシステムがハッキングされ、指示や管制ができなくなってしまった。エイミィの手腕ですぐに復帰したものの、その時にはもうフェイトは倒されてしまった後だった。そのことで落ち込むエイミィを慰めるリーゼロッテ。

エイミィがなんとか捕らえた仮面の戦士の映像と状況を見て、改めて状況を整理する一同。

なのはの新型バスターの直撃を防御して長距離バインドを決め、それからわずかな時間で砂漠世界に転移、フェイトやシグナムに気づかれず、局のサーチャーにもかからずにフェイトの背後から完全な不意打ち。

その常軌を逸した移動速度や、技量のすさまじさがあらわになる。

さらに、アルフが到着するまで、フェイトを守っていたのはシグナムであり、シグナムはフェイトに謝罪の意志を示していたということ。

深まる謎にとまどいつつも、それぞれ捜査へと戻ってゆく一同。

早朝。八神家では、シグナムたちが神妙な表情で会議をしていた。

仮面の戦士の謎の行動。それはまるで自分たちを手助けするようでもあり、また別の目的があるようにも感じる。ただ確かなのは、仮面の戦士も闇の書の完成を望んでいるということ。

様々な可能性を検討する守護騎士一同。

完成した闇の書は、主以外には扱うことができない。

絶対たる力を得る闇の書の主に、洗脳や脅迫は意味を成さない。

いくら考えても、仮面の戦士が闇の書の完成を手助けする理由が見えてこないのだった。

念のため、今後はなるべくはやてのそばから離れないようにするというシャマル。

と、ヴィータが小さな疑問を口にする。

闇の書が完成して、はやてが真の主となって。

「それで、はやてはほんとに幸せになれるんだよね?」

当然のように、それを肯定する一同。「闇の書の主は大いなる力を得る」それは守護騎士である自分たちが、誰よりも知っているはずのこと。 

だが、自分の記憶から何かが欠け落ちている感覚を拭いきれないヴィータ。

自分の部屋のベッドで、いつものように目を覚ますはやて。

慣れた手つきでベッドから車椅子に移ろうするはやてだったが、突然襲った痛みにベッドから落ち、倒れてしまう。事態に気づき、病院へと運ぼうとする騎士一同。

一方、アースラの医務室。目を覚ましたフェイトは、リンディがそばについているのに気づく。

状況に気づき、あわてるフェイト。リンディからの説明で、自分が戦闘中に背後から倒されたこと、リンカーコアを奪われたことをフェイトは知る。

同時に、アルフがずっとそばについていて、今はフェイトの傍らで眠っていること。

そして、眠っていた自分の手を、リンディがずっと握っていてくれたことを。

照れるフェイトに、「うなされてたみたいだったから」と微笑むリンディ。

食事と飲み物を持ってきてくれるという申し出を遠慮するフェイトだが、リンディは笑って、横になっているよう伝える。

そんなリンディを見送り、握られていた手を見つめるフェイト。

それは、「アリシア・テスタロッサのコピー」ではなく、
「フェイト・テスタロッサ」本人が初めて感じたぬくもりだった。

海鳴大学病院では、石田医師がはやての診察をし、容態に特に問題がないことにほっとひと息つく。意識を取り戻したはやては、「ちょっと滑って転んで、胸と手がつっただけ」で、それなのに皆でおおごとにして…と苦笑い。ひとまずの無事を喜ぶ一同だったが、石田医師はシグナムとシャマルを呼び、状況を説明する。検査ではなんの反応も出ていなかったが、酷い痛がり方から見ても、「つっただけ」ということはないはず。

痛みやつらさを人に見せたがらずに隠してしまうはやての性格もあり、万が一に備える意味でも、石田医師は入院をすすめる。

そのことを告げられ、残念そうなはやて。

皆の食事を作れなくなるのが心配…というはやてをなんとかなだめて、入院を了承させる一同。

着替えや本を取りに一度戻る一同も見送り、一人の病室で、胸を押さえてうずくまるはやて。

本局、無限書庫では、ユーノが順調に調査を進めていた。

ここまででわかったのは、闇の書の「真の名」と、その性質。

闇の書は本来「夜天(やてん)の書」と呼ばれる研究分析用の魔導書で、主とともに旅をして、各地の偉大な魔導師の魔法を蒐集し、研究するためのものだったと言う。

だが長い歴史と、幾人もの持ち主を経るうち、その機能はいつしか歪められ、壊され、異形の品へと変わっていってしまった。

巨大な魔力媒介炉としての機能に目をつけた歴代のマスターのいずれかが、その力を破壊に使う改変を行い、また別のマスターが旅をする機能を改変し、その後のマスターが破損したデータを自動修復する機能を改悪し…。

そんな歴史を経るうち、ついに夜天の書は破滅の力を振るい、ページの蒐集が行われなければ主すら食い殺し、無限の転生と永遠の再生機能を備えた呪いの魔導書…「闇の書」へと変わってしまった。

「闇の書」として生まれ変わってからは、確かに完成後に主は「大いなる力」と闇の書を操る能力…管理者権限を得るが、その発露はごくわずかな時間のみであり、その後すぐさま闇の書は暴走を始め、主の魔力と魂をまたたくまに食い尽くし、その力を無差別破壊と周辺地域の侵食に使い始める。

魔導書自体の破壊は、無限転生機能のせいで無意味。

真の主として管理者権限を得たものしか制御することはかなわず、その機を逃せば暴走。

主を押さえて蒐集を行わせないようにしても、蒐集の役に立たなくなった主を食い殺し、新たな主を求めて転生。

それが、闇の書を「封印不可能」と言わしめた呪いの正体であった。

ユーノの調査能力に驚く一同だが、ユーノは引き続き封印方法・停止方法についての調査を続けることを申し出て、クロノはそれを依頼する。

そして引き続き、事件の捜査を行う一同。

なのはとフェイトは、フェイトの魔力の回復を待つ意味も含めてしばらく待機となる。

学校ですずかに会うと、すずかの友人であるはやてが病気で入院してしまった…という話が出る。

近いうちに友達として紹介してくれるという話だったこともあり、折角だからお見舞いに行こう、と提案するアリサにうなずくなのはとフェイト。

すずかはシャマルの携帯にメールを送り、お見舞いに行っていいかどうかを聞くことにする。

すずかからのメールを受けたシャマルはすずかの思いやりに感謝するが、添付されていた写真を見て凍り付く。その写真は、もしお見舞いが駄目だったときにはこの写真をはやてに見せてあげて欲しい…と添えられた、なのは・フェイト・アリサ・すずかの応援の写真だった。

慌ててシグナムに連絡を取り、今後の対応を相談するシャマル。

幸いはやての魔法資質はほとんどが闇の書の中にあり、詳しい検査でもされないかぎり、さしたる魔力の反応もない。顔と名が割れている自分たちがはちあわせることさえなければ大丈夫だと告げるシグナム。シャマルは、出撃の際に変身魔法でも使っておけばよかったと後悔する。 

そして、見舞いの日。病室でひとり待つはやてを見舞うなのはたち。

初対面ながら、すずかの紹介ということもあり、またたくまにうち解ける5人。

そんな様子を、変装してこっそりと覗いているシャマル。

それを石田医師に見られ、「中に入ればいいんじゃないですか」という至極当然な疑問をぶつけられ、しどろもどろのシャマルだったが、石田医師からは感謝の言葉を受ける。

はやてが一人だった頃。その頃から年に似合わないほどに優しく、芯の強い子ではあったが、あんな風に明るく笑うことはあまりなかった。年相応の子供らしい笑顔を見せるようになったのはシグナムやシャマルたちが訪れてから。

はやての病気は難しいものだが、それでも医師として、大学病院として、懸命に戦っている。

見守るしかできない「家族」も、きっと辛いはず。

だが、一番辛いのは間違いなくはやてであり、自分たちはそれを支えてあげることしかできない。

はやてが強い気持ちで病気と戦えるよう、しっかりと支えてあげて欲しいと石田医師に頼まれ、涙ぐむシャマル。

その後、シャマルは改めて、闇の書がはやてを侵食する速度が速くなっていることに気づく。

このままでは、もって一月。 

ますます必至に蒐集を続ける守護騎士たちだが、ヴィータは一人、疑問とも戦っていた。

何かがおかしい。何かが壊れてしまっている。

そう訴える記憶を押し殺し、それでも今は、闇の書の蒐集をするしかない。

それだけが、はやてを救える唯一の方法と信じるしかない。

曇天の海上に降りしきる雨の中、そんな思いで、ヴィータは巨大な海獣に向かってグラーフアイゼンを振り上げる。

管理局本局。

深夜の応接室ではグレアムが一人、事件書類を眺めていた。

そこに現れるリーゼロッテとリーゼアリア。

二人は闇の書事件の進捗を報告し、クロノたちは善戦しつつも苦労しているという話を伝える。

かつて自分が果たせなかった「闇の書の封印」に、思いをはせるグレアム。

封印の切り札、デュランダルはすでに完成している。

グレアムは静かに、闇の書の行く末に思いをはせるのだった。

 
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